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大阪高等裁判所 平成元年(ネ)433号 判決 1990年7月31日

控訴人(原告) 山東雅克 外三名

被控訴人(被告) 大阪府 国

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

原判決の当事者の表示中「原告廉林賢二」とあるのを「原告廉林賢三」と更正する。

事実

一  申立て

1  控訴人ら

(一)  原判決を取り消す。

(二)  被控訴人らは各自、控訴人山東雅克に対し金三一三万三五八〇円、控訴人石田善彦に対し金二三九万七一九三円、控訴人廉林賢三に対し金一四一万八三七一円、控訴人山川宗清に対し金三二万九八二一円並びに右各金員に対する昭和五三年五月一二日から支払ずみまで年五分の割合による各金員の支払をせよ。

(三)  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(四)  仮執行宣言。

2  被控訴人大阪府

主文一、二項と同旨。

3  被控訴人国

(一)  主文一、二項と同旨。

(二)  担保を条件とする仮執行免脱宣言。

二  主張

当事者双方の主張は、次に付加訂正するほか、原判決事実摘示欄記載のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決の付加、訂正

(一)  二枚目表八行目に「原告ら」とあるのを「控訴人石田善彦、同廉林賢三、同山川宗清及び承継前一審原告山東伊三郎(以下、承継前一審原告山東伊三郎を併せ、この四名を「控訴人ら」という)と、五枚目表二行目に「昭和四七年一二月二一日」とあるのを「昭和五〇年四月一日」と、同三、四行目に「別紙時間外賃金明細目録記載の」とあるのを「原判決別紙時間外賃金明細目録の控訴人らの欄に記載の」と、別紙請求債権目録No.2の一〇行目、別紙時間外賃金明細目録No.9の最下行、同No.12の七行目に各「廉林賢二」とあるのをいずれも「廉林賢三」と各改める。

(二)  二枚目表九行目末尾の次に、「承継前一審原告山東伊三郎は昭和五七年四月七日死亡したので、その唯一の相続人控訴人山東雅克がその権利義務を承継した。」と、一八枚目裏二行目末尾の次に、「ただし、承継前一審原告山東伊三郎が昭和五七年四月七日死亡し、その唯一の相続人控訴人山東雅克がその権利義務を承継したことは認める。」と加える。

2  当審における控訴人らの主張

(一)  被控訴人大阪府の使用者としての責任

被控訴人大阪府は、本件委託契約により発生した本件請負関係において、その請負代金たる委託代金が、常駐警備員の賃金を最低賃金法に定めた最低賃金の額に押さえたとしてもその時間外割増賃金を委託代金の中から支給することができないという労働基準法、最低賃金法に違反するものであり、このことを知っていたものであるところ、地方公共団体という公の機関であり、法規を遵守し、住民などの権利や利益を侵害することのないようにする立場にありながら、請負企業たる近畿保安警備に対し右労働法違反の状態を生じさせたものである。

控訴人らはその雇用関係のすべてにわたって被控訴人大阪府が使用者であると主張するわけではなく、いわゆる親会社と子会社の労働者との使用者責任の問題において形式的な契約関係に基づく法的判断においてどうしても解決することのできない場合や右形式的な判断においては社会的に著しく不当な結果が生じる場合の救済方法として、具体的な事例によって一義的に親会社の責任を認めたり、形式的な雇用関係のある子会社と重畳的に責任を認めたりされるのと同様に、本件でも、本件全経過と控訴人ら警備員の労働条件が決定されてきた実質的支配関係をみれば、雇用関係のある近畿保安警備に未払賃金の支払義務があるのは当然として、被控訴人大阪府においてもまた重畳的に右支払義務を負うべきである。

すなわち、被控訴人大阪府は、本件委託契約代金及び賃金の決定について実質的な支配力を有し、また、昭和四四年一二月一五日のストライキによる解雇の撤回、昭和四八年の巡回パトロール等の新設、定年制の延長など労働条件の決定についても支配力を有し、更に労働現場においては仕様書以外の学校の業務を遂行させられており、労務自体について警備員に対する実質的な支配力を有したのであるから、その実質的関係を考慮すれば、被控訴人大阪府と控訴人らとの間には支配従属関係があったことは明白であり、被控訴人大阪府は本件時間外割増賃金相当額の支払について、近畿保安警備と重畳的に使用者としての責任を負うべきである。

また、ILO第九四号条約及び同第八四号勧告が公の機関の下請業者の労働者を保護する規定を定め、その内容を契約の中に定める義務を公の機関に課しており、また、建設業法一九条の三が注文者は自己の取引上の地位を不当に利用してその注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならないと定めているところ、本件委託契約代金額は右原価に満たない金額であるが、右条約、勧告、法律は普遍的な原則、公序を定めたものであるから、明示的な契約はなくても、右原則、公序により、被控訴人大阪府は控訴人ら警備員に対し、未払の時間外割増賃金相当額の支払義務を使用者の責任として負うというべきである。

(二)  被控訴人大阪府の不当利得

不当利得における法律上の原因があるかないかは、一応契約がある場合でも、その有効無効によって決まるものではなく、不当利得制度の基礎にある正義、公平の観念に照らし、問題の利得を帰属させるのが正当であるか否かにより決めるべきであり、本件の場合、委託契約があり、それが有効であるというだけでは法律上の原因があるといえず、以下の事情によれば法律上の原因はないといわなければならない。

被控訴人大阪府は、近畿保安警備との本件委託契約により、控訴人ら警備員の勤務時間を事実上決定し、それによれば必然的に常駐警備員に時間外労働がされるのを知っていたところ、前記のとおり、本件委託契約は、現実に学校警備の業務に服する常駐警備員に対して最低賃金を前提としてもその時間外割増賃金の支払ができないという内容であり、被控訴人大阪府は、この委託契約によって、現実の委託金をはるかに上回る業務(常駐警備員の労務)の提供を受け、利得したものである。

最低賃金の保障、時間外割増賃金の支払は、いずれも最低賃金法、労働基準法の要請するところであり、これに違反する労働契約は無効とされる強行法規であり、違反者には刑事罰まで予定されている。また、前記のように建設業法では下請関係先の労働者保護のために注文者に対し、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする請負契約の締結を禁止しているが、その趣旨は本件においても適用されるべきである。

更に、被控訴人大阪府は、地方公共団体として、その業務を遂行するにあたり、関係法規を遵守し、関連する住民などの権利や利益を侵害することのないよう、特段の配慮をしなければならない立場にあるが、そのような立場にある被控訴人大阪府が、このような最低賃金法、労働基準法違反を引き起こすことが構造上予定されていた本件委託契約は、法律上の原因とはなりえないというべきである。

そして、被控訴人大阪府は、本件委託代金がこのように最低賃金を前提としてもその時間外割増賃金の支払ができないという低額であることを知りながら、近畿保安警備に対し、右委託代金で契約をさせようとしたのであり、しかも、近畿保安警備としては右金額を受け入れなければ倒産することが明白であって、右金額を受け入れざるを得なかったのであり、被控訴人大阪府もそのことを知っていたのである。従って、近畿保安警備はいわば藁人形の役割を果たしているにすぎないのであるから、本件のような場合においては、被控訴人大阪府に不当利得返還義務が生じるというべきである。

(三)  被控訴人国に対する損害賠償請求

天満労働基準監督署長がした違法な本件許可処分によって控訴人ら警備員の被った損害は、何ら雇用契約上の義務がない長時間の時間外労働、休日労働(以下、まとめて「時間外労働」という。)に従事せしめられたこと自体であり、時間外労働に対する割り増し賃金を失ったことではない。すなわち、控訴人ら警備員は、平日で実に一五時間三〇分、土曜、日曜連日勤務(これは通常の勤務であった。)の場合は実に四四時間もの長時間(土曜、日曜の次に祝日がくる場合は実に六八時間にのぼる。)という極めて非人間的な長時間労働に服した。人間には、一日二四時間のうち、睡眠、食事など生理的に必要な時間のほか、教養、趣味、娯楽、家族との交流など人間として、あるいは健康で文化的な生活をおくるための時間が不可欠である。控訴人ら警備員はこれらをすべて放棄して長時間労働につかしめられたものであり、このことがまさに損害である。これらの損害を金銭に評価し、二割五分増しの割増賃金相当額の範囲で控訴人らは被控訴人国に対してその支払を求めるものである。

そして、右損害について、近畿保安警備に対し、時間外割増賃金相当額の請求権が発生しているとしても、これは契約に基づく賃金請求権ではなく、法律上の性質としては不当利得返還請求権であり、これが行使され、支払を受けないかぎり損害は残っており、右請求権が発生したからといって被控訴人国の不法行為に基づく損害賠償請求権が発生しないとはいえない。

仮に、近畿保安警備に対する時間外割増賃金相当額の請求権が発生する場合、被控訴人国との関係で損害が発生したと認められないとしても、近畿保安警備は本件許可処分そのものにより、昭和五八年八月七日破産するに至り、同社の破産手続廃止によってこの請求権の回収は不可能となったから、遅くとも、この時点において、控訴人ら警備員と被控訴人国との間において右割増賃金相当額の損害が発生したものといいうる。

3  当審における被控訴人大阪府の主張

(一)  被控訴人大阪府が、請負代金決定、労働条件の決定、労働現場における労務自体に実質的な支配力を有したということはない。

控訴人は、ILO条約・勧告の原則及び建設業法一九条の三の規定に基づいて本訴請求を根拠づけているが、右ILO条約は未だ批准されていないものであり、また本件委託契約は建設業法の適用のない契約であっていずれも本件請求の根拠となるものではない。

(二)  控訴人ら警備員の警備業務は本件委託契約に基づいてなされているのであるから法律上の原因に基づくものであり、これが法律上の原因に基づかないとは到底いえるものではない。そのことは被控訴人大阪府が公共団体であることによって左右されるものではない。

4  当審における被控訴人国の主張

控訴人ら警備員の近畿保安警備における常駐警備員としての労働の実態は、労働基準法四一条三号の監視又は断続的労働に該当するもので、本件許可処分は何ら違法ではない。

控訴人らは、本件許可処分によって違法な時間外労働がもたらされた旨主張するが、控訴人ら警備員が、長時間労働に服すべき義務は、本件許可処分から生じたものではなく、控訴人ら警備員が使用者である近畿保安警備と締結した労働契約から発生したものであり、本件許可処分によるものとはいいがたい。仮に、控訴人ら警備員において本件許可処分が長時間労働を義務づけるものと誤信していたとしても、それは控訴人ら警備員の責に帰すべきものである。

控訴人ら主張の、近畿保安警備が本件許可処分そのものにより破産したとの事実は否認する。近畿保安警備の破産原因と本件許可処分とは無関係である。仮に、本件許可処分が違法であったとしても、これと右破産との間には因果関係がない。

従って、被控訴人国が控訴人らに対して損害賠償責任を負ういわれはない。

三  証拠<省略>

理由

一  本件事実関係並びに控訴人らの被控訴人大阪府に対する請求についての判断は、次に付加訂正するほか原判決の理由一ないし四の説示と同じであるからこれを引用する。

1  原判決の訂正

二四枚目裏四行目に「四月に」とあるのを「四月からは同月」と、同一〇行目に「委託も」とあるのを「委託は」と、三一枚目裏六行目に「本件委託契約書一二条には」とあるのを「昭和五一年度までの本件委託契約書には、一二条に」と、同九行目に「一四条には」とあるのを「一四条に」と、同一二、一三行目に「規定されているが」とあるのを「規定され、昭和五二、五三年度の本件委託契約書にも同様の規定があるが」と、三三枚目表一〇行目に「対応すべきであること」とあるのを「対応すべきことがらであり」と各訂正する。

2  被控訴人大阪府の使用者としての責任

被控訴人大阪府と控訴人ら警備員とは直接の雇用契約関係になかったのであって、前記引用の原判決の理由二に認定の控訴人ら警備員の業務内容についての事実に鑑みれば、被控訴人大阪府に控訴人ら警備員に対する賃金支払義務を肯定させるほどの支配従属関係があったとは到底いえず、被控訴人大阪府の賃金支払義務を肯定することはできない。なお、巡回パトロールの新設、定年制の問題などについて被控訴人大阪府の意向が控訴人ら警備員の労働条件に影響を及ぼし、かつ本件委託契約代金額が事実上控訴人ら警備員の賃金に影響を及ぼしたことは認められるものの、警備業務の請負という本件委託契約の締結又は履行について契約当事者双方の意向が互いに影響を及ぼすことはその性質上当然のことであって、これを超えた支配従属関係があったとまでは認められず、また、労働の実態として控訴人ら警備員がその業務内容を指示した仕様書に記載されている業務以外の学校業務についても労務を提供していたことが認められるものの、これも本来義務がないことを知ってしていたものであり、実質的に支配従属関係があったとの根拠とはならない。そして、このことは、被控訴人大阪府が地方公共団体であることによって左右されないし、ILO条約又は建築業法の趣旨を考慮してもこれが本件に適用されるとはいえず、右判断を左右するものではない。

3  被控訴人大阪府の不当利得

控訴人らは、被控訴人大阪府は控訴人ら警備員の労務提供によって不当な利得を得た旨主張するのであるが、被控訴人大阪府が受けた労務提供は、近畿保安警備との本件委託契約に基づくもので、本件委託契約を無効とするような事情は認められず、従って右労務の提供を受けたことに法律上の原因が存在したことは原判決が説示(理由四)するとおりである。契約金額が低廉であるため近畿保安警備において警備員に対し最低賃金を支払うに足りず、これを被控訴人大阪府が知っていたとしても、近畿保安警備は一個の独立した法人であり、その任意の意思で本件委託契約を締結したものであるところ、企業が請負契約を締結するにあたってその受注代金額をいかほどにするかは基本的にその企業自身の決定すべき問題であって、これが任意になされる以上は低廉であってもこれを無効とする理由はなく(控訴人らの主張中には、任意になされたものではないかのようにいう部分もあるが、これを認めるに足る証拠はない。)、労働者に対する賃金の支払は専らその企業の責任であり、注文者にはその責任はないから、その企業が低廉な額で請負契約を締結し、そのため賃金の支払が滞る事態となったとしても、これによって注文者が請負企業からうけた給付が法律上の原因を欠くことになるとはいえない。控訴人らは、契約関係があっても本件委託契約は最低賃金法、労働基準法違反を引き起こすことが構造上予定されていたことなどの実質的な事情を考慮すれば、正義、公平に反するから法律上の原因はないというが、本件委託契約が最低賃金法、労働基準法違反を引き起こすことが構造上予定されていたとは認められないし、右各法規を遵守するのは受注者であり、かつ、控訴人らの使用者である近畿保安警備の責任であって、本件においては、未だ、法律上の原因がないとしなければならないほどの事情はないというべきである。被控訴人大阪府が地方公共団体という立場にあることを考慮しても同様である。

二  被控訴人国の損害賠償責任

成立に争いがない丁第一号証、弁論の全趣旨により真正に作成されたと認められる丁第四ないし第六号証、訴訟終了前一審被告代表者松岡勝の尋問の結果によれば、近畿保安警備は、昭和四三年四月に設立された会社で、同月から大阪サービスセンターの下請として本件警備業務を始めたものであるが、同年五月二五日天満労働基準監督署長に、「監視に従事する者に対する適用除外許可申請書」と題する申請書を提出し、これには業務の種類として警備、労働の態様として、<1>平日17時から翌日8時30分まで <2>土曜日12時30分から翌日8時30分まで <3>日曜日、祝日及び年末年始(12月29日から1月3日まで)8時30分から翌日8時30分まで、上記勤務時間内に三ないし五回校内を巡視すると記載されており、これに対する天満労働基準監督署の調査結果によれば、勤務内容については、1学校の施設、設備等の保全 2在校中の学校職員、生徒の危害防止 3物品の盗難予防並びに火気等の点検 4外部との連絡、文書の収受、電話電報の処理 5校門校舎の戸締まり、点検並びに開閉 6その他校内全般の監視となっており、勤務時間については右申請書と同じで、巡視回数は平日四回、土曜日五回、日曜日六回で一回あたりの所要時間は三〇ないし四〇分であり、天満労働基準監督署長はこの調査結果に基づき本件許可処分をしたことが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。そして、控訴人ら警備員の業務の内容については、前記引用の原判決の理由二に認定されているほか、取下前一審原告原万寿の証言により真正に作成されたと認められる甲第一九、第二〇号証、取下前一審原告丸山孝の証言により真正に作成されたと認められる甲第二一号証、原審証人宮原正彦の証言、取下前一審原告原万寿及び同丸山孝各本人尋問の結果によれば、警備業務という特性から例外はあるものの、通常は、全体の勤務時間内に巡視の占める時間の割合は二割以下であること、外部との連絡、文書の収受、電話電報の処理などの他の業務もその勤務時間中絶え間なくあるわけではないこと、午後一〇時から翌日午前六時までは警報機が鳴るといった場合のほか特段業務はなく、その間仮眠が可能であること、盗難又は火災警報機が鳴ることは、誤報が殆んどで、多くても月二回程度であることの各事実を認めることができ、これを覆すに足りる証拠はないところ、以上によれば、本件許可処分当時の本件委託契約による警備業務は身体及び精神の緊張が比較的少ない監視労働にあたるということができ、本件許可処分を違法とする理由はない。控訴人らは、本件警備業務は監視業務に尽きるものではなく、他にも重要な業務があるから控訴人ら警備員は監視に従事する者にはあたらず、また手待時間がなく断続的労働に従事する者でもないから労働基準法四一条三号の除外事由に該当しないと主張するが、監視以外の労働に従事するからといって監視労働に従事する者にあたらないとはいえず、本件警備業務はその全体を観察すれば、前記のとおり監視労働にあたるといってさしつかえない。なお、成立に争いがない甲第九号証、丁第二号証によれば、昭和四四年四月七日、労働省労働基準局長の本件通達が出され、控訴人ら警備員の土曜日、日曜日、並びに年末年始の連続勤務の実態は右通達に示された基準に反するものとなり、昭和五一年一二月九日の本件許可処分取消はこれを理由としてされたことが認められるが、労働基準監督署長にはその許可処分後継続して労働実態を調査し、許可基準に反する場合は右許可を取消(撤回)すべき義務はなく、本件許可処分の取消が同日までされなかったことに同署長の過失があるとはいえず、右取消を同日までしなかったことが違法であるとはいえない。以上によれば、その余の点を判断するまでもなく本件許可処分の違法、又はその取消をしなかったことの違法を前提とする控訴人らの時間外割増賃金相当額請求は理由がないというべきである。

三  してみれば、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。なお、原判決の当事者の表示中「原告廉林賢二」とあるのは明らかな誤謬であるからこれを「原告廉林賢三」と更正する。

(裁判官 柳澤千昭 東孝行 松本哲泓)

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